2020年4月28日火曜日

スルメイカの漁況の見通し (予報期間:5月~7月)

石川県沿岸 
 5月中旬の石川県周辺海域の50m深水温が低い年ほど5~7月のスルメイカの水揚量が多い傾向にあります。水温が低いとイカの北上が遅くなり、本県沿岸で漁場が長期間形成されるためと考えられます。海況数値モデルでは、今年5月中旬の50m深水温は前年より高くなると予想されています。また、秋に生まれた孵化幼生はその後成長して春以降に漁獲対象になりますが、昨年秋の孵化幼生の分布密度は低かったことが分かっています(後述)。水温・幼生密度と水揚量の関係式から、今期の小型イカ釣りによる水揚量は1,456トンと見積もられ、前年(2,868トン)および過去5年平均(1,849トン)を下回ると予想されます。


日本海沿岸 
 漁獲加入前のスルメイカ(外套長2~10cm程度)の分布量を調べるため、石川県水産総合センター・富山県水産研究所・日本海区水産研究所は4月に日本海で表層トロール調査を行いました。調査時に外套長5cm以上であったイカが5~7月の漁獲対象になります。外套長5cm以上のイカの調査点当たりの平均採集尾数は0.8尾で、前年(9.0尾)および過去5年平均(17.0尾)を下回りました。一方、昨年秋の孵化幼生調査では、調査点当たりの平均分布密度は0.27尾と前年(0.17尾)並みに低く、過去5年平均(0.51尾)を下回っており、今期漁獲されるイカの孵化量は資源が少なかった1980年代の水準にまで落ち込んでいます。また、4月に本州沿岸で行われた調査船によるイカ釣り調査では、全調査点の釣機1台1時間当たりの漁獲尾数(CPUE)の平均値は0.1尾と低く、前年(3.8尾)を下回っており、沿岸への来遊は少ない模様です。以上から、今期の日本海沿岸への来遊量は前年および過去5年平均を下回ると予想されます。日本海沿岸の漁況予報(2020年度第1回日本海スルメイカ長期漁況予報)の詳細については、水産庁の資源評価等推進委託事業のページ(http://abchan.fra.go.jp/)をご覧ください。


石川県周辺海域の海面水温 (期間:4月15~19日)




■ 沿岸の海面水温 4月19日の本県周辺(海岸線より30海里程度)の海面水温は12~13℃台で、過去5年平均との差は+0.0~+0.5℃程度でした。

■ 沿岸観測ブイの水温 今期の水温は11.6~12.8℃で、4月上旬から0.3℃上昇しました。過去5年平均との差は-0.3~+0.5℃でした。

■ 港内の水温 今期の水温は12.0~13.3℃で、前年同時期との差は-1.5~+0.1℃、過去5年平均との差は-1.0~+0.3℃でした。


石川県主要港の水揚状況 (期間:4月1日~15日)

定置網 マイワシは前年を上回り、マアジ、サバは前年並み、ブリ・カタクチイワシは前年を下回りました。マイワシは2,747トン水揚げされました。2月前半から4月前半の累計は4,314トンで、前年(2,258トン)を上回り、過去5年平均(4,494トン)並みでした。
底びき網・ごち網 フグ類・ハタハタは前年並み、アマエビ・アカガレイ・ソウハチは前年を上回りました。ハタハタは30トン水揚げされました。2月前半から4月前半の累計は87トンで、過去5年平均(120トン)を下回りました。



刺網・釣り・その他 ベニズワイガニ・ヤナギバチメは前年を下回りました。




2020年4月17日金曜日

石川県周辺海域の水温 (期間:4月1日~4月5日)

沿岸の海面水温 4月5日の本県周辺(海岸線より30海里程度)の海面水温は11~12℃台で、過去5年平均との差は+0.5℃程度でした。

沿岸観測ブイの水温  今期の水温は
11.4~12.3℃で、3月中旬から0.1℃低下しました。前年同時期との差は+0.3~+0.7℃、過去5年平均との差は+0.5~+0.7℃でした。

港内の水温 今期の水温は11.9~12.9℃で、前年同時期との差は+0.5~+1.3℃、過去5年平均との差は+0.2~+0.8℃でした。




フクラギ漁および寒ブリ漁のまとめ


今期(2019年10月~2020年3月)の定置網によるフクラギの水揚量は416トンで、前年(236トン)を上回り、過去5年平均(409トン)並みとなりました。漁海況情報439号では、今期の水揚量を432トンと予想しており、ほぼ予想どおりの水揚げでした。

今期(2019年11月~2020年3月)の定置網による寒ブリの水揚量は271トンで、前年(698トン)および過去10年平均(614トン)を大きく下回りました。能登半島周辺の水温分布はブリの来遊に適した条件でしたが、2015年・2016年生まれの資源が少なく、このことが水揚げの減少に大きく影響したものと考えられます。今後、水温、資源量、回遊など様々な要因を再検証し、予測精度の向上に努めていきたいと考えています。

冬期のスルメイカ漁のまとめ (期間:2020年1月~3月)

今期の定置網による水揚量は413トンであり、前年(294トン)を上回り、過去5年平均(416トン)並みでした。漁海況情報440号では、今期の水揚量は前年並みで、過去5年平均を下回ると予想しており、予想を上回りました。今期は1月の能登・秋田沖の50m深水温が高く、スルメイカの来遊に不適な条件であったものの、2月の水揚げが比較的良好であり、今期の水揚量を押し上げました。

石川県主要港の水揚状況 (期間:3月16日~31日)


定置網 ブリ、スルメイカ、カタクチイワシ、マアジは前年を下回りました。マイワシは1,506トン水揚げされました。2月から3月までの累計は1,567トンで、前年(47トン)を上回り、過去5年平均 (3,099トン)を下回りました。

まき網 サバは前年を上回り、マアジは前年を下回りました。

底びき網・ごち網 ニギス、アカガレイ、マダラ、アマエビ、ソウハチは前年を上回り、ハタハタ・フグ類は前年を下回りました。

刺網・釣り・その他 ナマコ・ヤナギバチメ・フグ類は前年を上回り、ベニズワイガニ・フクラギ・コゾクラは前年を下回りました。

マイワシの資源と漁況の現状


石川県のマイワシの水揚量は長く低迷していました。しかし、近年、増減は大きいものの、水揚量が10,000トンを超える年もみられるようになっています。

日本周辺海域で漁獲されるマイワシには対馬暖流系群と太平洋系群の2つがあり、日本海では主に対馬暖流系群が漁獲されます。対馬暖流系群の資源量は1970年代以降急増し、1988年にピークに達しました。その後、資源量は急速に減少し、2001~2003年には低水準で推移していましたが、2004年以降、増加する傾向にあります。本県のマイワシの水揚量は資源量と同様に増減しており、近年は増加する傾向にありますが、年々の変動が大きいことが特徴です。

そこで、石川県と島根県の水揚量を比較してみました。水揚量は、2017年には石川県で減少、島根県で増加し、逆に、2018年には石川県で増加、島根県で減少しています。これは、マイワシの分布が両年で異なっており、2017年には山陰沖、2018年には能登半島沖に偏って分布していたためと考えられます。また、2014年は両県ともに水揚量が少なく、マイワシは沖合に分布し、沿岸への来遊が少なかったと考えられています。

今年は3月23日からマイワシの漁獲が本格化しています。昨年より9日早く、豊漁であった2018年より43日遅い漁期入りとなりました。今年は1月から太平洋側や山陰沿岸でも好漁となっています。今後も漁況を注視していきます。(白石宏己)