2012年4月27日金曜日

日本海沿岸および石川県沿岸のスルメイカ漁況の見通し


 石川県水産総合センター、富山県水産研究所、日本海区水産研究所は、4月中旬に鳥取県から秋田県の沖合で表層トロールを行い、漁獲加入前のスルメイカ(概ね外套長2~10㎝)の分布量を調べました。

 外套長5㎝以上のイカの調査点当たりの平均採集個体数は32.4尾であり、近年(過去5ヵ年)平均の13.5尾および前年の2.3尾を上回りました(図)。これらのイカは成長して、5~7月の予報期間中に石川県以北の日本海沿岸で漁獲されます。今後、漁獲対象に成長するイカは比較的多く分布しており、能登半島東岸でも外套長15㎝前後のイカが漁獲され始めていますが、福井県以西の日本海沿岸では3~4月の漁獲量は低水準で推移しています。これらの状況から、日本海沿岸および石川県沿岸では、5~7月の来遊量(漁獲量)は昨年を上回り、近年平均並みになると考えられます。

 昨年は5月末まで水温が低めでイカの来遊が遅く、6月以降は水温が高めに転じてイカの北上が早かったため、石川県沿岸では漁期が短縮して不漁となりました。気象庁の予報では、4月下旬から5月中旬の海面水温は平年並みか平年より高くなると見込まれています。また、独立行政法人水産総合研究センター発表の日本海海況予報でも、4~6月の海面水温および深度50m水温は平年並みになると予想されています。従って、漁期の開始は昨年より早く、近年平均並みになると考えられます。

 以上の詳細「平成24年度第1回日本海スルメイカ長期漁況予報」については、日本海区水産研究所のホームページをご覧ください。(http://jsnfri.fra.affrc.go.jp/
(海洋資源部 四方崇文)

沿岸観測ブイの水温(4月21日~25日の平均)



・岸観測ブイの水温(水深10m)
 過去3年平均に比べ、小浦・鵜川沿岸では高めでした。4月21日~25日の平均水温は、11.5℃~13.7℃で、4月上旬に比べ約1.0℃上昇しました。

・港内水温(水深1.5m)
 過去3年平均に比べ、いずれの観測点も高めとなりました。4月21日~25日の平均水温は、11.9℃~14.5℃で、4月上旬に比べ約1.6℃上昇しました。

石川県主要港の水揚げ状況(4月11日~20日)




・定置網
 スルメイカは宇出津港・七尾地区主体に前年をかなり上回りました。サイズは平均外套長15cm(12~19cm)の小型のものが主体でした。マアジ・マサバ・ガンドは前年を上回り、マイワシ・サワラ(サゴシを含む。)は前年を下回りました。

・まき網
 ブリ・ガンドは前年を下回り、マダイは前年並みでした。
・底びき網・ごち網
 ハタハタは前年を上回りました。サイズは中小銘柄(平均体重47グラム)主体でした。ニギス・アカガレイは前年を上回り、アマエビは前年並みでした。
・その他(刺し網・釣り・採介藻など)
 ブリ・ガンドは輪島港・蛸島港主体に前年並み、フクラギは前年を下回りました。


2012年4月19日木曜日

「さわら」春漁期(4~6月)の漁況見通し


 平成12年(2000年)以降日本海におけるサワラの漁獲量が急増しました。本県でも定置網を中心に年間1,000トン以上のサワラが漁獲されており、全国でもトップクラスの漁場となっています。サワラは大きさにより、「さごし」(概ね1㎏未満)と「さわら」(1㎏以上)の2つの銘柄に分かれています。本県のサワラ漁は「さわら」が主体の春漁と、「さごし」が多い秋漁に分けられます。


 本県定置網における「さわら」の春漁期(4~6月)の漁獲量には、前年の秋漁期(9~12月)の「さわら」漁獲量に正比例する関係がみられます(図1)。この関係式に、昨年の秋漁期漁獲量187トンを代入すると、今年の春漁期の漁獲量は344トンと見積もられます。漁期中の海況条件(水温等)により変動するものの、前年(419トン)を下回るが過去10年平均(249トン)をやや上回る漁獲量が期待されます。なお、本格的な漁期は4月下旬以降になると見込まれます。
(海洋資源部 辻俊宏)


沿岸観測ブイの水温(4月13日~17日の平均)


1 沿岸観測ブイの水温(水深10m)
 過去3年平均に比べ、小泊沿岸では高め、小浦・鵜川沿岸では低めで推移しています。4月13日~17日の平均水温は10.9℃~12.8℃で、4月上旬に比べ約1.1℃上昇しました。


2 港内水温(水深1.5m)
  過去3年平均に比べ、宇出津港では低めとなりました。4月13日~17日の平均水温は11.0℃で、4月上旬に比べ約1.1℃上昇しました。

石川県周辺海域の水温分布(4月上旬)


1 能登半島北西海域の各層水温 (白山丸の4月海洋観測結果)

 能登半島北西沖の沿岸から50マイル以内の海域の平均水温は、前年に比べ表面から水深100mで1℃以上高め、水深200m・300mで0.6℃~0.8℃高めでした。
 50マイル~100マイルの海域の平均水温は、表面・水深50mで0.5℃高めでした。

2 水深200mの水温分布図 (日本海区水産研究所発行の日本海漁場海況速報No.678)
 平成24年4月上旬の水温分布図(水深200m)を前年と比較すると、輪島市北方に水温の高い海域が見られます。能登半島西方沖には水温の低い海域が岸寄りに分布しています。

石川県主要港の水揚げ状況(4月1日~10日)

・定置網
 スルメイカは七尾地区主体に前年を上回りました。マサバ・メジマグロは前年を上回り、マアジは前年並み、マイワシ・カタクチイワシは前年を下回りました。

・まき網
 マダイは金沢港・蛸島港・七尾港で水揚げがあり前年を上回りました。ブリ・ガンドは前年を下回りました。
・底びき網・ごち網
 荒天が続き出漁隻数が前年の半分程度となり、低調な水揚げとなりました。ニギスは前年を上回りましたが、ハタハタ・アカガレイ・アマエビなど主要魚種はいずれも前年を下回りました。
・その他(刺し網・釣り・採介藻など)
 刺し網・釣りのブリ・ガンドは前年を上回り、フクラギは前年を下回りました。



2012年4月13日金曜日

爆弾低気圧の強風(4月3日)による流れの発生について

4 月3 日から4 日にかけて、日本海で低気圧が急速に発達し、県内各地で記録的な強風が観測されました。ここでは、内浦海域3カ所で稼働中のリアルタイム観測ブイの観測結果から、この強風に起因する内浦沿岸での流れの発生状況を取りまとめました。

■気象の状況
 4月2日21時に黄海にあった1006hPaの低気圧は、24時間後の3日21時には日本海中部で964hPaと急速に発達しました(図1)。これにともなって、各地で南から西寄りの風が非常に強まり、金沢では南の風19.4m/s(14時40分)、輪島では西南西の風17.5m/s(19時00分)を観測しました(図2 上の金沢と輪島の図)。

■強流の発生状況
 能登町小浦沖では北西向き0.9ノット(4日13時30分)、同鵜川沖では西向き0.9ノット(4日17時20分)を観測しました(図2 下の小浦と鵜川の図)。これに対し、珠洲市小泊沖では、4日夜から東寄りの流れが強まり、東北東向き1.1ノット(5日00時20分)を観測しました(図2 中央の小泊の図)。小泊沖の東寄りの流れは、飯田湾に発生した時計回りの流れによるものとみられます。

■急潮をもたらす南西寄りの強風が観測されたにもかかわらず、大規模な急潮が発生しなかったのは、海水が冷却されてよく混合していたため、風による運動が生じにくかったことが原因と考えられます。今後、気温が上昇して表層水が暖められると、温かく軽い海水が、冷たく重い海水の上に乗る状態(成層状態)となり、表層水は風の影響を受けて容易に運動するようになります。成層が強まる5月~11月であれば、20m/sに達する南西風は確実に急潮を発生させるため、厳重な注意が必要となります。
(海洋資源部 大慶則之)


石川県主要港の水揚げ状況(3月21日~31日)




・定置網
 サバ類は宇出津港・七尾地区主体に前年をかなり上回りました。マイワシは3月上旬以降、前年をかなり上回って推移しています。サイズは中羽(平均体重59グラム)主体でした。メジマグロは前年をかなり上回りました。サイズは8kgから10kgサイズが主体でした。

・まき網
 ブリは前年を下回り、ガンド・マダイは前年を上回りました。
・底びき網・ごち網
 荒天が続き出漁隻数が少なかったため、低調な水揚げとなりました。ハタハタ・アカガレイ・ニギス・アマエビなど主要魚種はいずれも前年を下回りました。
・その他(刺し網・釣り・採介藻など)
 ガンド・サヨリは前年並み、フクラギは前年を下回りました。